Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しゅんせつ

春雪

久生 十蘭

Leggi 春雪 (しゅんせつ) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 11.672 caratteri · 23 schermate

Aozora Bunko

戦争中だから、まだしもあきらめがよかったともいえるが、いくらあきらめようと思っても、あきらめられないものもあり、是非とも、あきらめなければならないというようなものでもない。死んだものには、もうなんの煩いもないのだろうが、生き残ったものの上に残された悲しみや愁いは、そう簡単に消えるものではない。

柚子はそのころ、第※(ローマ数字10、1-13-30)航艦の司令官をしていた兄の末っ子で、母は早く死に、三人の兄はみな海軍で前へ出ていたので、ずうっと寄宿舎にいて、家庭的には、めぐまれない生活だった。

だいたいが屈託しない気質で、あらゆる喜びを受けいれられる人生の花盛りを、しかめッ面で暮し、せっかくの青春を、台なしにしているようにも見えなかったが、それにしても、十七から二十三までの大切な七年間を、戦争に追いまくられてあたふたし、とりわけ最後の二年は、池田の二人の娘を連れて、茨城県の平潟へ疎開し、そこから新潟、また東京と、いつ見ても、ズボンのヒップに泥がついていた。そうしたあげくのはて、過労と栄養失調、風邪から肺炎と、トントン拍子のうまいコースで、ろくすっぽ娘らしい楽しさも味わわず、人生という盃から、ほんの上澄みを飲んだだけで、つまらなくあの世へ行ってしまった。