Classici giapponesi con furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(三)
岡本 綺堂
Leggi 時代推理小説 半七捕物帳(三) (はんしちとりものちょう) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 201.612 caratteri · 405 schermate
この三月のあいだには別に記すべき事もなかった。ただ彼の澹山が諸方から少なからず画料を貰って、その胴巻がよほど膨れて来たのと、娘のおげんと特に親しみを増したのと、この二ヵ条のほかには何事もなかった。しかし、娘の問題は若い旅絵師に取ってすこぶる迷惑の筋であるらしかった。娘は自分の恩人という以上に澹山を鄭重に取り扱った。かれが朝夕の世話は奉公人どもの手を借らずに、娘が何もかも引き受けていた。その親切があまりに度を過ぎるのを澹山は内心あやぶみ恐れていながらも、むやみにここを立退くことの出来ない事情もあるらしく、迷惑を忍んで千倉屋の奥にうずくまっていた。
「先生。お寂しゅうござりましょう」
柴栗の焼いたのを盆に盛って、おげんは行燈の前にその白い顔を見せた。奥州の夜寒にもこの頃は鳴き絶えて、庭の銀杏の葉が闇のなかにさらさらと散る音がときどきに時雨かとも疑われた。娘は棚から茶道具をとりおろして来て、すぐに茶をいれる支度にかかった。
「いや、もう毎晩のこと、決してお構いくださるな」と、澹山は書きかけていた日記の筆を措いて見かえった。「お父さんはどうなさった。きょうは一日お目にかからなかったが……」