Classici giapponesi con furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(三)
岡本 綺堂
Leggi 時代推理小説 半七捕物帳(三) (はんしちとりものちょう) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 201.612 caratteri · 405 schermate
それからだんだんと枝がさいて、次のような話が出た。
安政二年三月四日の午過ぎに、不思議な人間が品川沖にあらわれた。
この年は三月三日の節句に小雨が降ったので、江戸では年中行事の一つにかぞえられているくらいの潮干狩があくる日の四日に延ばされた。きょうは朝から日本晴れという日和であったので、品川の海には潮干狩の伝馬や荷足船がおびただしく漕ぎ出した。なかには屋根船で乗り込んでくるのもあった。安房上総の山々を背景にして、見果てもない一大遊園地と化した海の上には、大勢の男や女や子供たちが晴れた日光にかがやく砂を踏んで、はまぐりや浅蜊の獲物をあさるのに忙がしかった。
かれらの多くは時刻の移るのを忘れていたので、午飯を食いかかるのが遅かった。ある者は船に帰って、家から用意してきた弁当の重詰をひらくのもあった。ある者は獲物のはまぐりの砂を吐かせる間もなしに直ぐに吸物にして味わうのもあった。ある者は貝のほかに小さい鰈や鯒をつかんだのを誇りにして、煮たり焼いたりして賞翫するのもあった。砂のうえに毛氈や薄縁をしいて、にぎり飯や海苔巻の鮓を頬張っているのもあった。彼等はあたたかい潮風に吹かれながら、飲む、食う、しゃべる、笑うのに余念もなかった。