Classici giapponesi con furigana
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こよみ
暦
壺井 栄
Leggi 暦 (こよみ) di 壺井 栄 (つぼいさかえ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 56.332 caratteri · 112 schermate
両親ともいないある日三番目のフサエが仕事場の隅に向ってしきりに何か削っている千吉に、
「千よ、風呂の水入れてくれ」といった。千吉は、ちぇっと舌を鳴らし、フサエをにらみつけ、
「いつまでひとを使いくさる。小んまい餓鬼まで千よ、千よ、ぬかしくさって――育てられた恩はもう差引してつりが来らあ!」
そういって、自分のすぐそばで鉋屑の中からえりだした木片を持って遊んでいる小さい高子を小突いた。思いがけなかったので高子は別に怪我をしたわけでもないのにありったけのような声で泣いた。千吉の鼻いきにフサエは呆然として物もいえなかった。かやが釜床の方から回ってきて、
「仕事場い入るないうてあるのに、高が悪い」
と、高子を抱き起した。千吉は黙って外へ出ていった。そのあとに玩具のように小さい櫃が竹釘を入れたらしく、仮輪で形だけ整ったのがころがっている。かやはそれを取上げ、
「見いほら、千が世帯でも持とうとて」
と、その可愛らしい櫃に子供を見るような眼を注いだ。
その日千吉は晩めしに戻ってこなかった。いねは夜半に仕事場の裏の若衆部屋で何かちがった気配がするのでのぞいてみると、壁に提灯をひっかけて千吉が自分の持ち物を行李の中へまとめている。