Classici giapponesi con furigana
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げっこうのした
月光の下
田中 貢太郎
Leggi 月光の下 (げっこうのした) di 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 2047 caratteri · 5 schermate
「どこへ往く、我家は流れたから、小屋がけをしておる、ここじゃよ」と、漁師は云った。
女は聞えないのか背後も向かなかった。
「どこへ往く、どこへ往く、我家はここじゃないか」
女はそれでも背後を向かなかった。漁師は不思議でたまらなかったが、何か理があるだろうと思って、跟いて往った。
月は傾いて四方の物の影が多くなっていた。女はその中をひらひらと躄音もさせずに歩いた。
樹木の茂った小高い台地が来た。そこは村のはずれになっていた。台地の上へは一条の小径がついていた。女はその台地の下へ往くと、ふと姿を消した。
「お葉、お葉、お葉」と、漁師は驚いて附近を探して歩いたが見つからなかった。
漁師はつったったままで声をあげて泣いた。
朝三人伴の村の者は、台地の下で悲しみ沈んでいた壮い漁師を見つけて声をかけた。壮い漁師は白白と明けた朝の光が眼に入らないような風で、じっと人びとの顔を見ていたが、
「女房が帰って来て、ここまで来ると見えんようになった、探してくれ」と悲しそうに云った。
人びとは眼を見あわした。
「それは、お前が、あまり思うているから、夢を見たろうが、もう諦めて我家へ帰るが好い」