Classici giapponesi con furigana
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あさがおぞうし
朝顔草紙
山本 周五郎
Leggi 朝顔草紙 (あさがおぞうし) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 14.019 caratteri · 29 schermate
信太郎は槍を取り直して、油断なく四辺の気配を窺っていたが、もう人の襲いかかる様子もないので、手早く刀の柄袋を外し、いつでも抜けるようにして置いて静かに歩きだした。然し、それから建部邸へ着くまで遂に何事もなかった。
監物の屋敷は馬場外にあって、千五百石の格式とは思えぬ質素な構えだった。すでに門は閉めてあったが、
「安倍信右衛門の一子信太郎でござる」と云って案内を乞うと、待つ程もなく入れて呉れた。
持って来た槍を門番に預け、濡れた合羽を脱って衣紋を正し、玄関へかかると、式台のところに髪の半ば白くなった小柄の老人が出迎えていて、待ち兼ねたように、
「――信太郎か」と声をかけた。
「おお信太郎じゃ、立派に成長したのう、よく来たよく来た、独りか?」
「はい、――」と云って挨拶をしようとすると、
「ええ辞儀はあがってからの事じゃ、さ、先ず通れ、作兵衛、作兵衛、作兵衛は居らぬか、早う洗足を持て」
監物老人の声は感動に顫えていた、まるで肉親に迎えられるような温かさを感じながら、足を洗ってあがると、直ぐに風呂場へ導かれ、旅塵を落して出ると新しい衣服が揃えてあった。
信太郎は胸の躍るのを抑えきれなかった、ながいあいだの幻が将に実現しようとしているのだ。