Classici giapponesi con furigana
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もくせいのかおり
木犀の香
薄田 泣菫
Leggi 木犀の香 (もくせいのかおり) di 薄田 泣菫 (すすきだきゅうきん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 1383 caratteri · 3 schermate
「いい匂だ。木犀だな。」
私は縁端にちよつと爪立ちをして、地境の板塀越しに一わたり見えるかぎりの近処の植込を覗いてみた。だが、木犀らしい硬い常緑の葉の繁みはどこにも見られなかつた。この木の花が白く黄いろく咲き盛つた頃には、一二丁離れたところからでもよくその匂が嗅ぎつけられるのを知つてゐる私は、それを別にいぶかしくも、また物足りなくも思はなかつた。
名高い江西詩社の盟主黄山谷が、初秋のある日晦堂老師を山寺に訪ねたことがあつた。久濶を叙しをはると、山谷は待ちかねたもののやうに、
「時につかぬことをお訊ね申すやうですが……」
と言つて、
吾無隠乎爾
といふ語句の解釈について老師の意見を仰いだものだ。この語こそは、山谷がその真義に徹しようとして、工夫に工夫を重ねたが、どこかにまだはつきりしないところがあるので、もて扱つてゐたものだつた。
晦堂は客の言が耳に入らなかつたもののやうに何とも答えなかつた。寺の境内はひつそりとしてゐて、あたりの木立を透してそよそよと吹き入る秋風の動きにつれて、冷々とした物の匂が、あけ放つた室々を腹這ふやうに流れて行つた。
晦堂は静かに口を開いた。