Classici giapponesi con furigana
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ほんじょまつざかちょう
本所松坂町
尾崎 士郎
Leggi 本所松坂町 (ほんじょまつざかちょう) di 尾崎 士郎 (おざきしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 27.622 caratteri · 55 schermate
むっとこみあげてくる感情をおさえていると、次第におのぶの表情が硬ばってきた。それを持ち前の愛想笑いにゴマ化しながら、
「まだお絹には、ひとことも話しとりゃせんのに、いくら親だからといって、そんな無体なことを」
長い火箸で絶えまなしに囲炉裏の中から真黒に焼けた栗を拾いだす、同じ動作を無意識のうちにくりかえしていた。
「おい、何だって、今になりやがって」
声の調子が一変する。おのぶはびくっと肩をふるわせながら身をひいた。「だけんど、あんた、たしかにいったじゃないの、じっくり考えてから御返事するって」
「考えるにも程度があらア、あれから、もう十日も経っているんだぜ、それじゃあ、何ぼ何でも桔梗屋の隠居が可哀そうだ」
こび権は、すばやく内ぶところへ手を入れたと思うと、紙でひねった小さな包を一つ、おのぶの眼の前へつきだした。「給金の前渡しだといって、ちゃんと預ってきたんだ。遠慮することはねえよ、しまっておきねえ」
さア、どうだと言わんばかりに胡坐の腰をゆるがし、左手で毛脛をさすりあげた。
竹藪の丘を一つ越えると藤左衛門の屋敷である。
十五になったばかりの長男の藤作は一年ごとにぐいぐいと背丈がのびて、がっしりとした骨組はうしろから見ると未成年の子供のようではない。