Classici giapponesi con furigana
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あんずのわかば
杏の若葉
宮本 百合子
Leggi 杏の若葉 (あんずのわかば) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 2738 caratteri · 6 schermate
「ああ、これでいい! ありがとうござりました。まあ一服しておくれ」
再び、古風な柱時計が燻(くす)ぶった天井の下で、活溌にチクタクいいだした。ぬいは、溜息をついた。彼女は、母親が、沢山何か礼して、清二の労をねぎらってやってくれればよいと思って凝(じ)っと待っていた。が、母親は、柱にかかった時計を度々見て満足を示すだけで、ひどく三人は手持無沙汰だ。彼女が、思いきって炉の火箸をとりあげようとしたときであった。外を見たり煙草をすったりしていた清二が、ふと、手を延して片方火箸をとった。彼は、
「ア」と、ぬいに合図し、灰の上に書き始めた。
「アシタ、町デ、ホントノ、キカイ油ヲ、買ウ」
母親は、「ほう、そうかい」
と、金を出しに立った。ぬいは、一寸考えていたが、友達の背中に字を書いて読ませるときのように、熱心に、一字書いては判ったかどうかをためしながら、次の文句を灰に書いた。
「清サンハ、ホントニ、キカイノコトガ、オ上手デス」
底本:「宮本百合子全集 第二巻」新日本出版社
1979(昭和54)年6月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第5刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第二巻」