Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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とうじょうき

東上記

寺田 寅彦

Leggi 東上記 (とうじょうき) di 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 8356 caratteri · 17 schermate

Aozora Bunko

一篇広告の隅々まで読み終りし頃は身体ようやく動揺になれて心地やゝすが/\しくなり、半ば身を起して窓外を見れば船は今室戸岬を廻るなり。百尺岩頭燈台の白堊日にかがやいて漁舟の波のうちに隠見するもの三、四。これに鴎が飛んでいたと書けば都合よけれども飛魚一つ飛ばねば致し方もなし。舟傾く時海また傾いて深黒なる奔潮天と地との間に向って狂奔するかと思わるゝ壮観は筆にも言語にも尽すべきにあらず。甲の浦沖を過ぐと云う頃ハッチより飯櫃膳具を取り下ろすボーイの声八ヶましきは早や夕飯なるべし。少し大胆になりて起き上がり箸を取るに頭思いの外に軽くて胸も苦しからず。隣りに坐りし三十くらいの叔母様の御給仕忝しと一碗を傾くればはや厭になりぬ。寺田寅彦さんと云う方は御座らぬかとわめくボーイの濁声うるさければ黙って居けるがあまりに呼び立つる故オイ何んだと起き上がれば貴方ですかと怪訝顔なるも気の毒なり。何ぞと言葉を和らげて聞けば、上等室の苅谷さんからこれを貴方へ、と差出す紙包あくれば梨子二つ。有難しとボーイに礼は云うて早速頂戴するに半分ばかりにして胸つかえたれば勿体なけれど残りは窓から外へ投げ出してまた横になれば室内ようやく暗く人々の苦にせし夕日も消えて甲板を下り来る人多くなり、窮屈さはいっそう甚だしけれど吾一人にもあらねば致し方もなし。