Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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りゅうえいひろくかつえぐら

柳営秘録かつえ蔵

国枝 史郎

Leggi 柳営秘録かつえ蔵 (りゅうえいひろくかつえぐら) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.933 caratteri · 27 schermate

Aozora Bunko

得たりと追い付いた侍は、拝み討ちの大上段、

「小僧、今度は遁さぬぞ!」

切り下ろそうとした途端、にわかに侍はよろめいた。

「お杉様!」とうめくように云った。

やにわに飛び起きた鬼小僧、侍の様子を窺ったが、

「え、何だって? お杉さんだって? 俺もお杉さんを探しているんだ。赤前垂のお杉さんをな。……お前さんそいつを知ってるのか? 俺にとっちゃアお友達、同じ浅草にいたものだ」

「お杉様!」と侍はまた云った。

「貴女は死にかけて居りますね。……恋の一念私には解る。……餓えてかつえて死にかけて居られる」

侍はベタベタと地に坐った。

驚いたのは鬼小僧で、呼吸を呑んで窺った。

「細い細い糸のような声! 私を呼んでおいでなさる。三之丞様! 三之丞様と!」

「お前さん三之丞って云うのかい。……そうしてどこのお杉さんだね?」

鬼小僧は顔を突き出した。

9

いかにもこの時お杉の局は、柳営大奥かつえ蔵の中で、まさに生命を終ろうとしていた。

かつえ蔵は柳営の極秘であった。

そこは恐ろしい地獄であった。地獄も地獄餓鬼地獄であった。

不義を犯した大奥の女子を、餓え死にさせる土蔵であった。幾十人幾百人、美しい局や侍女達が、そこで非業に死んだかしれない。