Classici giapponesi con furigana
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くわのきものがたり
桑の木物語
山本 周五郎
Leggi 桑の木物語 (くわのきものがたり) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 39.815 caratteri · 79 schermate
十
悠二郎はそこへ寝ころんだまま、長いこと黙っておみつの泣くのを聞いていた。それからやがて眼をつむったまま、低い囁くような声でこう云った。
「おらあこの家で育った、生れるとすぐに来て、おめえのおふくろを母ちゃんと呼んで育った、大川の水も、観音さまの境内も、向島から小梅の端のほうまで、みんなおれの幼な馴染だし、喧嘩友達も大勢いる、ここがおれの故郷だ、――この家がおれの家だ、おめえのおふくろがおれの本当の母親だ」
おみつはひとしきり激しく泣いた、「悠ちゃん」と叫んで、袂で顔を包んだままそこへ泣き伏した。悠二郎はぐらぐらと頭を揺り、それからやはり低い声でこう続けた。
「おらあこの家の船頭になる、いつかお祖父さんが云ったそうだ、――当人がよければ船頭になるのもいい、あれはあれで気楽だし、なかなか粋なしょうばいだってよ、……おれにだって、猪牙船ぐれえ漕げるからなあ」
十
「杏花亭筆記」にいう、致仕してのち市井にかくれ、親族旧知と断って、無為に一生を終った、というのはこの事をさすのであろう。彼は仙吉を説きおつねをくどいた。仙吉はそのとき初めて、祖父から悠二郎のためにといって、多額の金を預かっているとうちあけた。