Classici giapponesi con furigana
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うめづしえんおうでん
梅津只円翁伝
杉山 萠円
Leggi 梅津只円翁伝 (うめづしえんおうでん) di 杉山 萠円 (すぎやまほうえん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 65.582 caratteri · 130 schermate
その明治四十一年か二年かの春であったと思う。梅津朔造氏が「隅田川」の能のお稽古を受けた。それは翁の最後のお能のお稽古であったが、翁は地謡座の前の椅子に腰をかけ、前に小机を置いてその上に置いた張盤を打って朔造氏の型を見ていた。地頭は例によって山本毎氏であったが、身体は弱っても翁の気象は衰えぬらしく、平生と変らぬ烈しい稽古ぶりであった。
ところがその途中で翁が突然にウームと云って椅子の上に反り返ったので、近まわりの人々が馳け寄って抱き止めた。それから大騒ぎになって、附近の今泉に住んでいる権藤国手を呼んで来る。親類に急報する。注射よ。薬よという混雑を呈したが、間もなく翁が寝床の上で正気付き、気息が常態に復して皆に挨拶し、権藤国手も安心して帰ったので皆ホッと愁眉を開いた。
ところが梅津朔造氏がその枕頭に手を突いて、
「それでは、これでお暇を……」
と御挨拶をすると翁がムックリ頭を擡げて左右に振った。
「おお。朔造か、いかんいかん。まだ帰ることはならん。今一度舞台へ来なさい。あげなザマではいかん」
と云い出して頑として諾かない。
皆舌を捲いて驚き且つ惑うた。