Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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せいかけんざっき

棲霞軒雑記

上村 松園

Leggi 棲霞軒雑記 (せいかけんざっき) di 上村 松園 (うえむらしょうえん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 7211 caratteri · 15 schermate

Aozora Bunko

そこを、気の弱いことでどうなると自らをはげまして、芸術に対する熱情と強い意志の力で踏み越えて――とにもかくにも、私は現在の境をひらき、そこに落着くことが出来たのである。

あの当時の苦しみやたのしみは、今になって考えてみると、それが苦楽相半ばして一つの塊りとなって、芸術という溶鉱炉の中でとけあい、意図しなかった高い不抜の境地をつくってくれている。

私はその中で花のうてなに坐る思いで――今安らかに絵三昧の生活に耽っている。

もう十七、八年も前のことである。

ある日、私の家の玄関先へ、一人の男があらわれて曰く、

「これは米粒ですが」

と、いって、一粒の米を紙片にのせてさし出した。

ちょうど、私と私の母が玄関にいたところであったので、妙なことを言い出す男だなと、米粒とくだんの男の顔を見守っていると、

「米粒は米粒ですが、ただの米粒と米粒が違う――これは」

と、米粒を私の目の前につきつけるようにして、

「この米粒には、いろは四十八文字が描かれてあるのです」

と、いう。

見たところ、いやに汚れた黒い米粒で、私たちの目には、いろは四十八文字どころか、いろはのいの字も読めなかった。