Classici giapponesi con furigana
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ようせんせい
楊先生
豊島 与志雄
Leggi 楊先生 (ようせんせい) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 4772 caratteri · 10 schermate
楊先生――私達の間では彼はいつもそう呼ばれた。一種の親しみと敬意とをこめた呼称なのである。父は日本人で、母は中国人であって、中華民国に国籍がある。
長らく東京の本郷区内に住んでいたが、最近、関西方面へ飄然と旅立っていった。恐らく、中国へ帰るつもりでいるらしいと、私には思える。追想は深い。
この楊先生を、今年の三月の或る夕方、私は通りがかりに訪れてみたことがある。
「只今、お仕事中ですから、こちらへ御通り下さい。」
女中はそう言って、私を、玄関から裏庭の方へ導いた。仕事中なら書斎の方だろうと思ったのだが、黙って女中について行くと、狭い裏庭の真中に大きな石が据えてある、その石に、楊先生は腰をおろして、煙草をふかしていた。薄いシャツとズボン下だけのみなりで、腰に帯を巻きしめ、汚れた手拭を帯にさしはさみ、足には支那靴をはいている。傍には、古材木が重み積ねてあり、鋸や大鉈小鉈が揃えてある。
私は微笑した。
「仕事というから、なんだと思ったら、薪割りですか。」
「そうです。下男の仕事です。似合うでしょう。」
楊先生は真面目にそう言った。中国の普通の家庭では、家の主人が下男の仕事などは決してしないものだと理解していた私は、彼の言葉や表情になにか皮肉なものを探ろうとしたが、彼はまったく真面目なのである。