Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ごくらく

極楽

菊池 寛

Leggi 極楽 (ごくらく) di 菊池 寛 (きくちかん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 6532 caratteri · 14 schermate

Aozora Bunko

京師室町姉小路下る染物悉皆商近江屋宗兵衛の老母おかんは、文化二年二月二十三日六十六歳を一期として、卒中の気味で突然物故した。穏やかな安らかな往生であった。配偶の先代宗兵衛に死別れてから、おかんは一日も早く、往生の本懐を遂ぐる日を待って居たと云ってもよかった。先祖代々からの堅い門徒で、往生の一義に於ては、若い時からしっかりとした安心を懐いて居た。殊に配偶に別れてからは、日も夜も足りないようにお西様へお参りをして居たから、その点では家内の人達に遉はと感嘆させたほど、立派な大往生であった。

信仰に凝り固まった老人の常として、よく嫁いじめなどをして、若い人達から、早く死ねよがしに扱われるものだが、おかんはその点でも、立派であった。一家の者は、此の人のよい、思いやりの深い親切な、それで居て快活な老婦人が、半年でも一年でも、生き延びて呉れるようにと、祈らないものはなかった。従って、おかんが死際に、耳にした一家の人々の愁嘆の声に、微塵虚偽や作為の分子は、交って居ない訳だった。

おかんは、浄土に対する確かな希望を懐いて、一家の心からの嘆きの裡に、安らかな往生を遂げたのである。