Classici giapponesi con furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Leggi 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 112.073 caratteri · 223 schermate
甲斐は左へ、雪をかぶった笹の上へ、さっと身を投げだした。雪けむりに包まれる甲斐の、躯とすれすれに、くびじろの大角が掠過し、鹿に特有の体臭があとに残った。
甲斐はすぐにはね起き、弓を拾い、矢を壺胡※(「竹かんむり/祿」、第3水準1-89-76)から抜いて、弓につがえながら、向うを見た。
くびじろは逃げなかった。その大鹿は五六間さきで、こちらへ向き直っていた。肩にあった一の矢はもうなくなっており、大鹿は烈しい鼻息をならしながら、前肢で地面を掻き、首を上下に振った。
――やる気か。
おまえもそのつもりか、と甲斐は思い、つよい感動におそわれながら、身構えをした。
風はいま、右前方から吹いていた。雪帽子をすべって、粉雪がしきりに顔へかかる。だがそれを払っている隙はなかった。甲斐は吹きつける雪に正面して構え、弓をやわらかく、ゆっくりとしぼった。
くびじろは首を振りやめ、頭部を低くして鼻息をならした。するとその白く凍る鼻息が、くびじろの怒りと敵意を表白するかのようにみえた。
――いまだ、くびじろ、さあ。
ぱっと大鹿が雪けむりをあげ、つぶてのように走りだした。