Classici giapponesi con furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Leggi 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 112.073 caratteri · 223 schermate
頭を垂れた丹三郎の眼から、涙のこぼれ落ちるのが見えた。甲斐はややしばらくして、静かな、力のぬけたような声で、云った。
「おまえは、その者を、憎むか」
丹三郎は「いいえ」と答えた、「憎むことができたら、と思いますが、私にはできません」
「鬼役にあがれば、おれとは主従の縁が切れる、おまえの願いはかなえられるようだし、それもごく近いうちと思われる、そうなっても憎むことはできないか」
丹三郎は「はい」と云った。
「鬼役は死ぬぞ」と甲斐は声をころして云った、「仔細は云えないが、毒薬がもちいられることはたしかなようだ、目的は若君の毒害ではない、若君の毒害だけが目的でなく、ただ事を起こすためにもだ、丹三郎」
甲斐はさらに声をひそめた。
「鬼役はこれまでとは違う、これからは死ぬことを必至と覚悟しなければならない、思いとまれ、丹三郎、おまえはまだ原田の家従だ、願いをとりさげれば」
「いいえ」と丹三郎は首を振り、両手で眼を押えながら、低いけれども力のある声で云った、「私は鬼役になります、死ぬことも怖れません、初めからその覚悟はできています」
「宇乃のためにか」
「私は親の代から原田家の家従でした」