Classici giapponesi con furigana
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そり
橇
黒島 伝治
Leggi 橇 (そり) di 黒島 伝治 (くろしまでんじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 11.663 caratteri · 24 schermate
イワンは、うしろの馭者に何か合図をした。
大隊長は、肥り肉の身体に血液がありあまっている男であった。ハムとべーコンを食って作った血だ。
「ええと、三百円のうち……」彼は、受取ったすぐ、その晩――つまり昨夜、旧ツアー大佐の娘に、毎月内地へ仕送る額と殆ど同じだけやってしまったことを後悔していた。今日戦争に出ると分っていりゃ、やるのではなかった。あれだけあれば、妻と老母と、二人の子供が、一ヵ月ゆうに暮して行けるのだ!――しかし、彼は大佐の娘の美しさと、なまめかしさに、うっとりして、今ポケットに残してある札も、あとから再び取り出して、おおかたやってしまおうとしていたことは思い出さなかった。
「近松少佐!」
大隊長は胸算用をつづけた。彼にはうしろからの呼声が耳に入らなかった。ほんとに馬鹿なことをしたものだ。もうポケットにはどれだけが程も残っていやしない!
「近松少佐!」
「大隊長殿、中佐殿がおよびです。」
副官が云った。
耳のさきで風が鳴っていた。イワン・ペトロウイチは速力をゆるめた。彼の口ひげから眉にまで、白砂糖のような霜がまぶれついていた。「近松少佐! あの左手の山の麓に群がって居るのは何かね。