Classici giapponesi con furigana
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わすれえぬひとびと
武蔵野
国木田 独歩
Leggi 武蔵野 (わすれえぬひとびと) di 国木田 独歩 (くにきだどっぽ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 94.018 caratteri · 192 schermate
たちまち霧のうちに消えてしまった。この時もしや今のは彼人ではないかという考えが電のように自分の胸に浮かんだ。
『まさか』と自分は打消て見たが『しかし都は各種の人が流れ流れて集まって来る底のない大沼である。彼人だってどんな具合でここへ漂って来まいものでもない、』など思いつづけて坂の上まで来て下町の方を見下ろすと、夜は暗く霧は重く、ちょうどはてのない沼のようでところどころに光る燈火が燐の燃えるように怪しい光を放ちて明滅していた。
『彼人とはだれのことか、』自分はここにその姓名を明かしたくない、単に『かれ』と呼ぼう。
かれは一個の謎である。またかれは一個の『悲惨』である。時代が人物を生み、人物が時代を作るという言葉があるが、かれは明治の時代を作るために幾分の力を奮った男であって、それでついにこの時代の精神に触れず、この時代の空気を呼吸していながら今をののしり昔を誇り、当代の豪傑を小供呼ばわりにしてひそかに快しとしている。自分はかれを七年以前、故郷のある村の村塾で初めて見た。かれは当時、村の青年四、五名をあつめて漢籍を教えていた。
自分は当時、かれを見るごとに言うべからざる痛ましさを感じた。