Classici giapponesi con furigana
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しにんのて
死人の手
田中 貢太郎
Leggi 死人の手 (しにんのて) di 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 3533 caratteri · 8 schermate
狭い板葺の家の中に、主人らしい男が地炉に火を焚いておりました。旅人は縁前へ往って、
「むこうの村へ往く者でありますが、泊めていただくことはできますまいか」と云いました。
「ちょうど好い処へ来た、私はちょっと下の村まで往って来ねばならんから、留守居をしておくれ」と、主人が云いました。
旅人は草鞋を解いて、簀子を敷いた縁側を跨いて地炉の傍へあがりました。主人は自在鉤につるして火の上にかけてあった茶釜から、茶を汲んでくれました。旅人は茶碗を見ると、今まで忘れていた咽喉の乾きをおぼえましたので、礼を云い云い、それを一息に飲みました。
「実は今日夕方、女房が病気で死んだから、下の村にいる親類へ知らして来たいと思うたが、何人も留守居をしてくれる人が来ないから、困っていたところだ、此処でゆっくり寝ておっておくれ」と主人が云いました。
旅人は大変な処へ来あわしたものだと思って、心では後悔しましたが、人情として厭とは云えないし、もしまた厭と云えば、其処を出なければなりませんが、真暗に暮れてしまっては、とても一歩も往けません、旅人はしかたなく「宜しゅうございます」と、云って主人の背後の方を見ました。