Classici giapponesi con furigana
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しにんのて
死人の手
田中 貢太郎
Leggi 死人の手 (しにんのて) di 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 3533 caratteri · 8 schermate
亡くなったと云う女房でありましょう、二枚折の小さな屏風を逆さにした陰に、蒲団をかけて寝ている者がありました。
主人は棚から皿に盛った物をおろして来て、
「飯があると好いが、飯は今晩喫ってしまったから、此の、枕団子のあまりでもあげよう」と、云って前に置いてくれました。それは粟の団子でありました。
こうした場合、こんな団子を他の家で出してくれたなら、どんなにか嬉しいか判りませんが、死人が鬼魅の悪いうえに、死人の枕頭に置いた枕団子のあまりだと聞いては、とても口にする気にはなりません。で、
「私は、下の村で数多物をたべて来ましたから、まだ何もたべたくはありません」と云いました。
主人はそれをほんとにしました。
「そんなら、腹が空いて来たら喫うが好え」と云って、それから壁厨を開けて、一枚の薄い蒲団と木の枕を出して来て、旅人の傍に置きました。
「これから一走り往ってくるから、寝てておくれ」
旅人は小さな声で返事をしました。主人は小さな松明に火をつけて、草履を穿いて出かけました。旅人は地炉にかけた茶釜を見つめながら、主人の跫音に耳をやっておりましたが、其の跫音は次第次第に遠退いて、やがて聞えなくなりました。