Classici giapponesi con furigana
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しにんのて
死人の手
田中 貢太郎
Leggi 死人の手 (しにんのて) di 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 3533 caratteri · 8 schermate
其の眼は、また死骸の方へ往きました。
ちょうど其の時でありました。死骸の顔のある方から蒼白い痩せこけた一本の手がすうと出て、枕もとの団子を一つ掴んで引込みました。旅人の頭には血が登りました。旅人はふらふらとなって縁側に出ましたが、逃げ出すのも恐ろしいので、縁側に腰をかけて、怖ごわまた死骸の方を見ました。と、冷たい氷のような毛もくじゃらな手が縁の下から出て、旅人の右の足を撮みました。旅人はもう気を失いました。
「おい、おい、どうした」と云って、揺り起す者の声に、旅人は正気づいて眼を開けました。傍には下の村へ往った主人が、二人の男といっしょに立っておりました。
「どうした、どうした」と、主人はまた云いました。
旅人は縁側に仰向きになって倒れておりました。
「ああ、ああ」と、旅人はそれからさきは云わずに顫えておりました。
「どうした、何か怖いことがあったか、下からも人が来て呉れたから、もう何も怖いことはない」と、主人が云いました。
旅人は起きあがりました。
「まあ、上へあがるが好い」と、主人は己で上へあがりながら、伴れて来た二人にも、「さあ、あがってくれ」と云いました。