Classici giapponesi con furigana
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ころされたてんいちぼう
殺された天一坊
浜尾 四郎
Leggi 殺された天一坊 (ころされたてんいちぼう) di 浜尾 四郎 (はまおしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 13.716 caratteri · 27 schermate
一
あれ程迄世間を騒がせた天一坊も、とうとうお処刑となって、獄門に梟けられてしまいました。あの男の体は亡びてもあの悪名はいつ迄もいつ迄も永く伝えられる事でございましょう。世にも稀な大悪人、天下を騙し取ろうとした大かたり、こんな恐ろしい名が、きっとあの男に永く永くつき纏うに違いございませぬ。
私のようなふつつか者が廻らぬ筆をとりましたのも、その事を考えましたからでございます。私からはっきりと申しますれば、あの男こそ世にも愚かな若人なのでございます。けれども決して大悪人ではございませんでした。
ああした不思議な運命に生みつけられた人間はおとなしく此の有難い御治世の、どこかの片隅にじッと暮して行けばよかったのでございましょう。
天一坊は此の世の中というもののほんとうの恐ろしさを知らなかったのでございます。真実の事実を有りの儘に申す事、もっとむずかしく申せば真実と信じた事をはっきりと申すことが、此の世の中でどんなに恐ろしい結果を招くかという事をあの男は存じませんでした。だからあの男は愚者でございます。世にも稀な馬鹿者でございます。
それに、自分の正しく希望してよい事を、はっきりと希望した、というのもあの男の考えが至らぬ所でございました。