Classici giapponesi con furigana
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さばくのこと
沙漠の古都
国枝 史郎
Leggi 沙漠の古都 (さばくのこと) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 110.076 caratteri · 220 schermate
あちこちに置かれた玻璃の道具、錫の食器、青磁の瓶――燈火の点かない一刻を仮睡の夢でも結んでいるように皆ひそやかに静まっている。
月はもう空に懸かってはいるがしかし太陽は没していない。昼でもなければ夜でもない。夜と昼との溶け合った真に美しい一刻である。
薄暮時のこの一刻を、私はしばらく味わおうとして食堂の椅子へ腰かけていた。
耳を澄ませば窓の外の芭蕉や蘇鉄の茂みから孔雀の啼き声が聞こえて来る。名残の太陽を一杯に浴びてまだまだ戸外は明るいと見える。孔雀の啼き声と競うように高い鋭い金属性の鸚鵡の啼き声も聞こえて来る。窓外の壁板に纒っている冬薔薇の花が零すのであろう、嗅ぐ人の心を誘って遠い思い出へ運んで行くような甘い物憂いまた優しい花の香が開け放された窓を通して馨って来る。その花の香に誘われて私の心は卒然と三年前に振りすてた故国の我が家へ帰って行く。……
夕の鐘が鳴り出した。回教寺院で鳴らす祈祷の鐘だ。冬といってもこの西班牙のマドリッドの暖さはどうだろう! 秋の初めと変りがない。雪は愚か雨さえもこの一ヵ月降ろうともしない。乾き切った十二月の空を通して鳴り渡る回教寺院の鐘の音の音色の高いのは当然だ。