Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
さばくのこと
沙漠の古都
国枝 史郎
Leggi 沙漠の古都 (さばくのこと) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 110.076 caratteri · 220 schermate
それでは眼醒めているのだろうか? それにしても彼らは身動きをしない。その時ラシイヌはふとさっきから、東洋でくゆらす抹香のような、死を想わせるような、「物の匂い」が、閉じこめた車内を一杯にして、匂っているのに気がついた。彼はある事を直感した。で彼は危難から遁がれようと急いで窓へ手をかけたが、もうその時は遅かった。見る見る身内の精力が消え、四肢が棒のように硬直し眼だけ大きく見開らいたまま腰掛けの上へ転がった。しかし意識は明瞭であった。あらゆるものがよく見えた。乗客も手荷物も窓硝子も。しかし一本の指さえも動かすことは出来なかった。尚、物音もよく聞こえた。列車の突進する轍の音、窓に吹きつける雪の音……ラシイヌはその時室の隅で女の笑う声を耳にした。笑い声の起こった室の隅を彼は辛うじて眺めて見た。口と鼻とへマスクを掛けた一人の女が立っている。赤い土耳古帽に黄色い手袋、狐の毛皮の外套を着て紫の靴を穿いている。そして右手に青銅で造った日本の香爐を捧げている。大変小さい香爐ではあるがそこから立ち昇る墨のような煙りは強い匂いを持っていた。女は室内を見廻した。それから香爐を腰掛けへ置いてツカツカとこっちへ近寄って来た。