Classici giapponesi con furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Leggi 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 178.609 caratteri · 362 schermate
十四
七は、案外素直にうけいれて、
「ようがす。異存はありません。――じゃ打揚場にわかれましょ」
きりっといって七が腰を立てると慎吾は反対に、どっかりと石に腰をすえて、
「ま、あわてるな、拙者は武士だから果し合いの作法もある。戸倉で調えて来た土器がここにあるから、お互いに、千曲川の水でも酌み合って、ゆっくりと腹をすえてかかろうではないか」
と、七の出鼻を折った。
しかし、その態度のわりあいに、慎吾のひとみは、四方の闇に対して、決して、落着きのあるひとみではなかった。
十四
これが、ほんとの一国対一国の煙火陣ならば、鯨幕をひき、押太鼓、陣羽織、あだかも戦場の対陣のような空気が立つところであるが、今夜は、藩の次席家老のせがれと一煙火師との果し合いだから、暗夜の大河に人影はほんの僅か、寂寞として、用意の足音もいと静かである。
そのかわりに、もし敗れたら恋も生命もない。必死なところだ。しめっぽい川辺の夜風も、山と山に狭ばめられた初秋の空も、蕭殺とした墨いろの中に鬼気をもって、なんともいい難い悽愴という感は、むしろ今夜のほうがつよい。
雑草の離々としている河原地を、水際離れて、およそ双方の間、約五間ほどの距離をとって立ち別れた。