Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

Leggi 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 178.609 caratteri · 362 schermate

Aozora Bunko

「誰だッ」

妙に、尖って云った。

――と、消え入るような声で、

「わたし」

「わたし? ……あ。お仙じゃねえか、てめえは」

「兄さん」

お仙は、間がわるそうに、そして力のない肩を落して、そこへ坐った。

「……こんにちは」

「どうしたんだ、お仙。すっかり痩せこけてしまって、見違えるようだ。槌屋でも大変な騒ぎをしたらしい。おれも、心配していたところだ」

「有馬から、何か、いって来ましたか」

「あたりめえだ。送って行ったまま、旅の客といっしょに逃げてしまったんだというじゃねえか。とんだ浮気をしやがって、男に捨てられて来たんだろう」

「兄さん、私が逃げたのは、それだけの理由じゃありませんよ。おまえだって、あまりじゃないか。人の身体を何だと思ってるのさ」

「む、守口へ、おめえを身売りの一件か。……実あ、その事なら、少しほかで工面ができたから、まあ当分は間に合うよ」

「当分は間にあっても、お金につまるたんびに、私の身体をあてにされていちゃたまらないよ。――きょうは、その入り用の百両を上げますから、これッ限り、兄妹の縁を切ってくださいね」

「なに、百両持って来た?」

「え。縁切り金」