Classici giapponesi con furigana
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うみのししゃ
海の使者
泉 鏡花
Leggi 海の使者 (うみのししゃ) di 泉 鏡花 (いずみきょうか) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 4811 caratteri · 10 schermate
その時は、雛の鶯を蹂み躙ったようにも思った、傷々しいばかり可憐な声かな。
確かに今乗った下らしいから、また葉を分けて……ちょうど二、三日前、激しく雨水の落とした後の、汀が崩れて、草の根のまだ白い泥土の欠目から、楔の弛んだ、洪水の引いた天井裏見るような、横木と橋板との暗い中を見たが何もおらぬ。……顔を倒にして、捻じ向いて覗いたが、ト真赤な蟹が、ざわざわと動いたばかり。やどかりはうようよ数珠形に、其処ら暗い処に蠢いたが、声のありそうなものは形もなかった。
手を払って、
「ははあ、岡沙魚が鳴くんだ」
と独りで笑った。
中
虎沙魚、衣沙魚、ダボ沙魚も名にあるが、岡沙魚と言うのがあろうか、あっても鳴くかどうか、覚束ない。
けれどもその時、ただ何となくそう思った。
久しい後で、その頃薬研堀にいた友だちと二人で、木場から八幡様へ詣って、汐入町を土手へ出て、永代へ引っ返したことがある。それも秋で、土手を通ったのは黄昏時、果てしのない一面の蘆原は、ただ見る水のない雲で、対方は雲のない海である。路には処々、葉の落ちた雑樹が、乏しい粗朶のごとく疎に散らかって見えた。