Classici giapponesi con furigana
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うみぼうず
海坊主
田中 貢太郎
Leggi 海坊主 (うみぼうず) di 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 1271 caratteri · 3 schermate
これは小説家泉鏡花氏の話である。
房州の海岸に一人の壮い漁師が住んでいた。某日その漁師の女房が嬰児の守をしながら夕飯の準備をしていると、表へどこからともなく薄汚い坊主が来て、家の中をじろじろと覗き込んだ。女房はそれを見て、御飯でも貰いに来たのだろうと思って、早速握飯をこしらえて持って往って、
「これを」
と云って差しだしたが、坊主は横目でちらと見たばかりで手を出さなかった。女房はやさしかった。それではお銭がいるだろうと思って、今度は銭を持って出て、
「それでは、これを」
と云ったが、坊主はそれにも見向きもしなかった。女房は鬼魅わるくなって、金を持ったまま後すざりして庖厨の方へ引込んで往ったが、怕くて脊筋から水でもかけられたようにぞくぞくして来たので、早く所天が帰って来ればと思いながら慄えていた。そのうちに四辺がすっかり暗くなって、時化模様になった海がすぐ家の前でざわざわと浪をたてだした。坊主はと見ると最初の処に突ったったまま身動きもしない。その影のような真黒い坊主の姿を見ると、女房はもういてもたってもいられないので、そっと裏口から隣へ遁げだそうとした。