Classici giapponesi con furigana
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かいひんいちじつ
海浜一日
宮本 百合子
Leggi 海浜一日 (かいひんいちじつ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 3953 caratteri · 8 schermate
発動機の工合がわるくて、台所へ水が出なくなった。父が、寝室へ入って老人らしい鳥打帽をかぶり、外へ出て行った。暖炉に火が燃え、鳩時計は細長い松ぼっくりのような分銅をきしませつつ時を刻んでいる。露台の硝子越しに見える松の並木、その梢の間に閃いている遠い海面の濃い狭い藍色。きのう雪が降ったのが今日は燦らかに晴れているから、幅広い日光と一緒に、潮の香が炉辺まで来そうだ。光りを背に受けて、露台の籐椅子にくつろいだ装で母がいる。彼女は不機嫌であった。いつも来る毎に水がうまく出ないから腹を立てるのであった。
「――今度は私がその何とか云う男にじかに会ってみっちり言ってやる。いくら計算は計算でも水が出なけりゃ迷惑をするのは私達ばかりだ」
編物をしながら、上の娘の佐和子が、
「計算て何なの」
と訊いた。彼女は結婚して親たちとは別に暮していたから、この別荘に来たのもそれが二度目であった。
「いいえね、理論の上からではここの水は半馬力の発動機できっと上る筈だと云うんだよ。自分がそう主張して半馬力のを据えつけたんだから、どうしてもそれでやらなけりゃ面目が潰れるって云うんで、幾度も幾度もなおすんだがね――無理なのさ」