Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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あざらしとう

海豹島

久生 十蘭

Leggi 海豹島 (あざらしとう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 24.311 caratteri · 48 schermate

Aozora Bunko

私は薄暗い避難所へ戻って、なすことなく撫然と煖炉の傍に坐っていたが、狭山と五人の焼死者のほかに、この島に誰かもうひとり人間がいたのではないかという疑いをおこした。何気なく数を読取ってしまったが、たしかに六足の沓があった。藁沓は丈夫なもので、どんな長い冬でも、一足で充分に間にあうから、焼死した人間が五人である以上、藁沓は五足でなければならぬはずである。

さしたる意味もなく、眠りにつくまで、漠然たる疑問を心の隅に持ちつづけた。

第五日

一、正午近くなると、避難所の窓からぼんやりと蒼白い薄陽がさしこんできて、澱んだように暗かった土間の片隅を照らしはじめた。久しぶりに見る陽の光に心をひかれ、陽だまりの方へ眼をやると、なにか嬌めかしいほどの紅い色が強く眼をうった。そばへ行って見ると、それは匂いだすかと思われるばかりの真新しい真紅の薔薇の花簪であった。

荒凉たる岩山の孤島に真紅の薔薇の花簪とは、あまりにも唐突だが、これは一昨日の朝まで、木箱や樽の雑多な堆積のうしろに落ちていたので、障壁をつくるとき、それらを扉の前に移したため、偶然な事情によって、見得るはずもないものが眼に触れることになったわけである。