Classici giapponesi con furigana
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しせい
消えた受賞作 直木賞編
富田 常雄
Leggi 消えた受賞作 直木賞編 (しせい) di 富田 常雄 (とみたつねお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 17.806 caratteri · 36 schermate
正直を言えば、嬉しく、心楽しい思いであった。この老人をなつかしみ、帰りを喜ぶ羞らいと思ってもいいのだろうか。主従とはいえ、奈世とわしとは他人ではないのだし、やはり、情が移って、久さびさの対面に思わず羞恥の頬を染めたのに違いないと気付き、わしはほんとに心楽しかった。
半月も過ぎて秋も深まり、百舌鳥の鋭い啼き声が庭園を横切るかと思えば、裏の山の実を啄いばむ渡り鳥が群れ啼いて空を渡り、時雨れる日が多かった。
曳き船の曳かれながらに時雨来る
昨日は久々に拙いながら句が浮んだので、今日、めずらしく晴れた小春日和の縁に出て、短冊にその句を認めてから、わしは庭下駄をはき、杖をとって庭園に出てみた。
奈世は昼食の後で、女中の一人が宿下がりしたのでお手伝いをして参りますがと、わしに訊いてから出て行ったが、もう、二時間近く現われず、わしとしては珍らしい独りきりのそぞろ歩きであった。
池のほとりに植えた守護木の松に近い四方仏の手水鉢に松葉が茶色になって溜まり、赤蜻蛉がすいすいと池の面をかすめて飛び交って居る。
わしは中島に渡した小羽板ばしの上に立って、池の面を見渡して居たが、何処からともなく枯葉を焚く匂いと、話し声がきこえる様なので、眼を移すと築山に続く松林に二人の人間を見つけた。