Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ぼうふううにおわったいちにち

清風荘事件 他8編

松本 泰

Leggi 清風荘事件 他8編 (ぼうふううにおわったいちにち) di 松本 泰 (まつもとたい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 20.532 caratteri · 43 schermate

Aozora Bunko

「まあ、かわいい人ね」

波瑠子は少女の額に接吻した。

「波瑠子さん、またあのいやなハルピンの方が来ていらっしゃるのでしょう? わたし、心配よ。どうかして、あの方をお店へ来させないようにする法はないでしょうか」

「あの人が来ているなんて、どうしてみのりさん分かって?」

「わたしには分かるわよ。あなたの着物に、この間と同じトルコ煙草の移り香がしていますもの。そして、あなたはあの方が来て以来、急に心配事ができたのね。あの方はきっと、悪い人でしょう」

「ええ、わたしにとっては悪い人ですけれども……わたしのほうがもっと悪い人かもしれないわ。……ああ、みのりさん、あなたにお頼みがあるのよ。わたしの大切な大切なものを、だれにも知らせずにそっと預かっていてくださらない?」

みのりは大きく頷いた。

その時、広間のほうでだれかが波瑠子を捜している声がした。

「みのりさん、ではあとでね。あなたはもうこんなところにいないで、早く下へいらっしゃい」

波瑠子はカーテンの外へ出ていった。みのりは耳を傾けて遠ざかっていく足音を聞いたのち、自分は音も立てずに暗い梯子の下に消えてしまった。

広間へ戻った波瑠子は、棕櫚竹の鉢植えの陰になっているテーブルのほうへ行った。