Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しぶやけのしそ

渋谷家の始祖

宮本 百合子

Leggi 渋谷家の始祖 (しぶやけのしそ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 68.023 caratteri · 133 schermate

Aozora Bunko

垣内が読んでいるのは、教科書なのだ。

それも、現に今朝、彼が、噛み煙草でも、吐きすてるような苦々しさで教えて来た、予科の教科書ではないか。

子供らしい!

なにしに、あんな子供だましみたいな文句を、声高々と読んでいるのだろう、自慢なのか? 肩幅の広い、土地の者の垣内の姿を思い浮べると、その滑稽な対照が、思わず彼を笑わせる。正隆は、そろそろと忍び足で近寄った。

不意を襲って、正直な垣内を、真赤に恐縮させたい悪戯心が、フイと彼の心に萌したのである。

然し、正隆の忍び足は、五歩と続かなかった。まるで、彼が動き出したのを合図のようにして、読むのを止めた垣内の声を受けて、今度は、更に意外なもう一つの声が質問をし始めた。

声は、紛う方もない園田ではないか、園田! 今朝、正隆が教えた組の中でも、おとなしい学生として、非難のしようもなく思われていた、その園田が、今、ここにいる――。

正隆は、一寸判断がつきかねた。この学生と垣内とを、どう結び付くべきなのか、けれども、少年の口から洩れる質問を、全身の注意で聞いて見ると、正隆は、火の玉のようになった。

少年は、今朝、授業時間に、正隆に向って質ねたと同じ箇処を、また繰返して、垣内に質問していたのである。