Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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わたらせがわ

渡良瀬川

大鹿 卓

Leggi 渡良瀬川 (わたらせがわ) di 大鹿 卓 (おおしかたく) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 280.528 caratteri · 557 schermate

Aozora Bunko

自分がいかなる境遇にあろうとも、神意を奉ずることさえできれば、身の幸不幸は敢えて意とするに足らない、と思うようになった。それは雲間が裂けて、一時にさッと光が射しこんできた思いであった。手の届かぬ高いところにあったものを、今は膝の上にさぐることができる悦びだった。被害事件が有罪になるか無罪になるかということなどは、ただ神意の存するままである。そこに気づくと、永島はもはやそのことで心を悩ますことをしなくなった。すると心が安静になったためか、やがて打撲傷が癒えるとともに、獄中に静坐していながらも体も至って健かになってきた。

独房の壁の高い所に小さな窓があって、わずかばかりの空が覗いていた。永島は一日、その窓をよぎる小鳥の影を見た。気のせいか、光のなかで囀り交す声もきこえたようである。そう思って見れば、壁に句切られた空のいろも、すでに深々と春がにじんでいた。いつか彼の脳裏には明るい春景色がととのっていた。自分の村をはじめ渡良瀬川沿岸一帯に春が蘇っていた。堤は茅萱や蓬や八重葎で青々と蔽われていた。左を見れば一面の菜の花が鬱金の底光りをあげていた。右には果しなく紫雲英田がつづいていた。