Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
ためいきのへや
溜息の部屋
山本 周五郎
Leggi 溜息の部屋 (ためいきのへや) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 7369 caratteri · 15 schermate
「諸君、検察官が来ましたぜ」
私の語りたかった喜劇というのはこれで終いだ。その後ブラフ・シネマではふたたび女声独唱を加えようとはしなかった。
安土竜太郎はほどもなく、ふたたび以前のように鉢巻をして曲弾を始めたし、沢木七郎は酔って『ニイベルンゲン』の説明に浪花節を入れた。喫煙卓子の上の花瓶には、ながいこと一輪の赤いカネエションが、汚く萎れたままうちやられてあったが、いつかそれもどこかへ見えなくなってしまった。
壁にはもはや新しいポスタアは貼られなかった、単に貼られぬばかりでなく、糊が乾き割れて落ちるものさえ、あえて元のように貼直す者もないのだ。かくして壁さえも以前のように、その灰色の面をだんだんとひろげていった。
すべてがもとの姿にかえった。炉の中はいつも煙草の吸殻で狼藉をきわめ、掃いても掃いても床の上は泥靴で汚された。そして爺さんは、すこしも変らぬテンポで炭を割り、湯を沸し、それから部屋の隅へ引籠って溜息を吐いている。すべてが旧のままになったのだ。
『これは人生の溜息の部屋である』
そういう文字が、火箸か何かで灰色の壁へ荒あらしく書きつけられてあるのを爺さんが発見したのは、安土竜太郎が、新しく下町にできるダンス・ホオルの楽手に身を売って、ブラフ・シネマから去って行ったよほど後のことである。