Classici giapponesi con furigana
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おぼるるもの
溺るるもの
豊島 与志雄
Leggi 溺るるもの (おぼるるもの) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 17.690 caratteri · 36 schermate
泣く奴があるものか。」
そして二人共涙を流した。それから接吻した。
彼女は時々軽い咳をしていた。唇の中程にはいつも濃く紅を塗っていた。その唇に私は自分の唇を自由に任せた。
「やたらに接吻しちゃいけないよ。病気なんか、接吻が一番あぶないから。」
「分ってるわ。ただ一人っきりよ。」
そして私達はまた長い隔てない抱擁をした。
私の膝の上に、私の腕の中に、惜しげもなく投げ出されてる彼女の肉体は、軟骨質の水母――もしそういうものがあれば――それのようだった。赤い錦紗の着物の下に、不随意筋の運動めいた、柔かな中に円いくりくりした動きを持っていた。そして私の眼の前に、すぐ睫毛が届きそうなところに、彼女の頸筋の真白な細かな皮膚が、平らに、広く、無限に伸び拡がって、温い雪――というものがあれば――それに蔽われた大地の肌のように、静に無際限に波動し初める。それが私を溺らしてゆく……。私は息苦しくなって、非常な努力で目玉を一回転させる。格恰のいい耳朶の端が、黒髪の下にふっくらと覗いている。私はそれにつかまる。――彼女の耳はごく柔かだった。
私は立上りかけると、彼女は無理に縋りついてきた。