Classici giapponesi con furigana
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らどうせんせい
潤一郎ラビリンスII――マゾヒズム小説集
谷崎 潤一郎
Leggi 潤一郎ラビリンスII――マゾヒズム小説集 (らどうせんせい) di 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 16.093 caratteri · 33 schermate
二重廻しに鳥打帽を被っているのが、今しがた幕間になったので、帽子の鍔を深く引き下げ、顔の半分を外套の襟に隠してうつ向き加減にしているのは、矢張極まりが悪いのであろう。B新聞記者はこっそりその男の後ろの席へ忍び寄って、背中の方から帽子の庇を覗き込んだ。
「やあ先生でいらっしゃいますか、いつぞやは大変失礼を。―――」
そう云ったのは、実はまだ確かに見当がついたのではない。たとえ先生であったにしても素直に化けの皮を現わすかどうか分らないから、出し抜けに斯うカマをかけてみたのである。
「う、………」
と云ってその男は、ぎょっとしたらしく身をすくめて、後ろ向きに肩の角から睨めつけるように見返したが、その「う、………」と云う声をきくと、もうどうしても先生に違いないことが分った。記者が嘗て悩まされたのは、此の曖昧な、噫だか返辞だか判明しない「う、………」と云う受け答えなのである。こんな煮え切らない声を出す動物は先生の外にはめったにあるまい。
「あのう、御記憶でいらっしゃいますかどうですか、―――もう餘程前、三四年以前に、一度お宅へお伺いいたしましたA雑誌の記者でございますが、………」