Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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はなかみろうにん

濞かみ浪人

吉川 英治

Leggi 濞かみ浪人 (はなかみろうにん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 19.425 caratteri · 39 schermate

Aozora Bunko

女中が来て、

『お目ざめでございますか』

『小山田殿は、いつのまに帰られたのじゃ。帰り途が、分らぬではないか。弱ったぞ、これは』

『御心配なさいますな。鉄砲洲のお近くまで、猪牙舟でお送りいたします』

『猪牙舟とはなんだ』

『お舟でございます』

『舟か、それはいい』

『あれ、あぶのうございます。唯今、お支度させますから、ちょっと、お待ちあそばして』

雪は小やみだったが、猪牙舟の上は、耳が削がれそうに寒かった。

『船頭。茶屋の者が、確か酒を入れてくれた筈だの』

『その、箱火鉢のそばに、暖めてあるのがそうで』

『オオこれか』――数右衛門は手酌で飲みながら、

『ああいい心地じゃ。ゆるりとやれ、悠るりと』

『下流へ行くんですから、碌に漕いじゃあおりません』

『はやいのう。――そんなにこの河は流れが急か』

徳利を片手に、覗き込んでいた時だった。猪牙舟に番んで従いて来た一艘の屋形船がある。それがいきなり舳をぶつけて来たかと思うと、猪牙舟の船頭はわざと、勢いよく数右衛門のそばに蹌けて、

『あっ、あぶねえ』

彼の腰を、とんと突いた。

数右衛門は、徳利を持った儘、川の中へ、もんどり打って飛び込んでしまった。