Classici giapponesi con furigana
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はいいろのきおく
灰色の記憶
久坂 葉子
Leggi 灰色の記憶 (はいいろのきおく) di 久坂 葉子 (くさかようこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 65.588 caratteri · 132 schermate
「酒、してくれ……あがれ」
私と彼女に一度に彼は命令した。私はうすぐろくなったサンダルを隅っこの方にならべると女中の招じる部屋、つまり彼がどっかりあぐらをかいている六畳の青畳の上へ近よった。
「はいってこんか」
私は真中の朱塗りの机の手前にちんまりすわった。
「煙草吸うんやろ、わかっとる」
彼は、白いセロファンの下に、くっきり赤い丸のある煙草の箱をポケットから放り出した。私は一本つまんで口にくわえた。
「ふん」
彼は、笑いとも溜息ともつかないものをはくと、わざわざ自分のライターを私の顔に近づけてくれた。夕飯にはまだ少しはやかったので、御客は他に誰もいなかった。バラック立の安ぶしんの天井から、白い障子ばりの電燈の笠が目立ってうつくしかった。とっくりと、小さな鉢とお箸がまもなく運ばれた。先刻の女中が、彼と私とにお酒をついだ。
「おいふみ。これに云うなよ」
彼は親指をみせた。社長のことだと感知した。
「おまえも黙っとれ」
私にむかって上目使いに命令した。私は私と彼が差向いで御酒をのんでいる様子がとてつもなくおかしいものに思われてにやにやしていた。彼は多くは喋らなかった。