Classici giapponesi con furigana
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ぼんのうひぶんしょ
煩悩秘文書
林 不忘
Leggi 煩悩秘文書 (ぼんのうひぶんしょ) di 林 不忘 (はやしふぼう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 86.705 caratteri · 173 schermate
「声がする。待てよ。女の声のようだが――。」
ふかいつづら笠に面体は隠れて、編目の隙に、きらりと眼が光るだけだが、道中合羽に紺脚絆、あらい滝縞の裾を尻端折って、短い刀を一本ぶっ差した二十七八のまたたび姿。
「ううむ! 好い声だなあ。この文珠屋佐吉の足をとめる声、聞いていて、こう、身内がぞくっとすらあ!――駿、甲、相の三国ざかい、この山また山の行きずりに、こんな、玉をころがす声を聞こうたあ、江戸を出てこの方、おいらあ夢にも思わなかった。おお、何か数えている声だが――。」
右手に谷を望んで、剣の刃わたりのような一ぽん路だ。草のなかの小径に、釘づけにされたように歩を忘れた男の耳へまたしても響いてくる銀鈴の山彦――。
「下から聞える。それに、湯のにおいがする。」男は片手を耳屏風に、「十一、十二、十三――何を数えてるのか知らねえが、とんだ皿屋敷だ。ここらは猿の棲家だてえから、定めし狐も多かろう。化かされめえぞ。」
と、歩きかけたとたん――木の間をとおして、閃めくように眼に入った眼下の湯の池と、そして、そこに何を認めたのか、江戸の文珠屋佐吉と自ら名乗るその男は、ひた、ひた、と吸い寄せられるように路を外れて、歯朶を踏みしだき、木の根を足がかりに、たちまち、そこに、谷を覗きぐあいに生えている一本の山桂の枝へ、油紙包の振分け