Classici giapponesi con furigana
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もゆるほお
燃ゆる頬・聖家族
堀 辰雄
Leggi 燃ゆる頬・聖家族 (もゆるほお) di 堀 辰雄 (ほりたつお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 71.309 caratteri · 144 schermate
私はそういう彼の気に入りたいと思った。私はその植物実験室のなかへ這入っていった。
そこには魚住ひとりしかいなかった。彼は毛ぶかい手で、不器用そうに何かのプレパラアトをつくっていた。そしてときどきツァイスの顕微鏡でそれを覗いていた。それからそれを私にも覗かせた。私はそれを見るためには、身体を海老のように折り曲げていなければならなかった。
「見えるか?」
「ええ……」
私はそういうぎごちない姿勢を続けながら、しかしもう一方の、顕微鏡を見ていない眼でもって、そっと魚住の動作を窺っていた。すこし前から私は彼の顔が異様に変化しだしたのに気づいていた。そこの実験室の中の明るい光線のせいか、それとも彼が何時もの仮面をぬいでいるせいか、彼の頬の肉は妙にたるんでいて、その眼は真赤に充血していた。そして口許にはたえず少女のような弱弱しい微笑をちらつかせていた。私は何とはなしに、今のさっき見たばかりの一匹の蜜蜂と見知らない真白な花のことを思い出した。彼の熱い呼吸が私の頬にかかって来た……
私はついと顕微鏡から顔を上げた。
「もう、僕……」と腕時計を見ながら、私は口ごもるように云った。