Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ぎせいしゃ

犠牲者

平林 初之輔

Leggi 犠牲者 (ぎせいしゃ) di 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 18.364 caratteri · 37 schermate

Aozora Bunko

隠してはためにならぬぞ」

課長は肥った身体を満足そうにゆすぶりながら、言いたいだけのことを言ってしまうと、先刻から不動の姿勢をとっていた護衛の警官にあごの先で合図した。

今村は、咽喉に栓が詰って、一言もものがいえなかった。しょんぼりとして、警官にひきたてられてゆく彼の姿を見ると誰の眼にも、すっかり恐れ入ってひきさがってゆく罪人とかわりはなかった。

実際今村自身にさえ、自分が罪人であるとしか思われなかったのである。絶体絶命の不可抗力に、「お前が犯人だ」と暗示され、その暗示は、人間わざではどうすることもできないような気がした。ニューヨークの摩天楼のてっぺんから、真逆様に墜落するときに感ずるでもあろうような、何とも施しようのない、ただ落ちるがままにまかせておくよりほかに仕方のないような宿命を感じた。

昨夜のことがきれぎれに彼の頭をかすめて通りすぎる。細君の顔と刑事課長の顔とが消えたり浮んだりする。その度びに彼は脳髄の中へ氷の棒をつきとおされるような思いがした。

それから間もなく臨検の一行が帰り、証人として浅野社長も召喚されて、予審廷が開かれたことは言うまでもないが、その内容は今のと大同小異だからここで発表する必要はなかろう。