Classici giapponesi con furigana
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ねこまち
猫町 他十七篇
萩原 朔太郎
Leggi 猫町 他十七篇 (ねこまち) di 萩原 朔太郎 (はぎわらさくたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 28.483 caratteri · 58 schermate
昔の僕には、茶亭に芸者遊びをする中年者の気持ちが、どうしても不思議でわからなかった。しかし今では、女を呼んで酌をさしたり、無駄話をしたり、三味線を弾かせたりしながら、そのいわゆる「座敷」の情調気分を味いつつ、静かに酒を飲んで楽しむ人々の心理が、漸くはっきり解って来た。つまりこうした中年者らは、享楽の対象を直接の性的慾求に置くのではなく、むしろその性的なものを基調として、一種の客観的な雰囲気を構成する事で、気分的に充分エンジョイしているのである。灼きつくような情慾に飢えていた青年時代に、こうした雰囲気的享楽の茶屋遊びが、無意味に思われたのは当然だった。おそらく青年時代の情慾は、戦場にある兵士らのそれと同じく、正に仏説の餓鬼地獄に類するだろう。汗で油ぎってる黒い顔に、いつも面皰を吹き出してる中学生の群を見る時、僕は自分の過去を回想して、言いようもなく陰惨の思いがする。かりにメフィストフェレスが出現して、今一度青春を与えようと約束しても、僕はファウストのように小躍りして、即座に跳びつくか否かは疑問である。
しかし、苦悩がないということは、常にその一面において、快楽がないということと相殺する。