Classici giapponesi con furigana
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ねこぐるま
猫車
宮本 百合子
Leggi 猫車 (ねこぐるま) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 17.310 caratteri · 35 schermate
庄平にとっては、今というときがあるからこそ単調な一日をどうやらしのいで来ている。血気の旺な稼ぎ手の息子らに左右から押しつけられ、温泉にでもつかったようにじっと仰向いておとなしくしていたが、暫くすると、庄平は萎びた指で、
「アレ」
と弱々しく云って自分の頭の上の方を指した。
「なんで」
寝ころがったまま正一が頭をあげてその方角を見たが格別新しく目につくものがない。するとあっち側の直二が片膝ついて起き上って、父親の顔の上に自分の顔を押しつけるようにしながらきいた。
「なんで、お父はん、アレちゃ、なんで?」
「アレ」
「ラジオか――ラジオどすか」
当年仔でも起き上るときのように手足を一緒くたにドタドタと直二が起きて行って、兄のすぐ頭の上にあるラジオをまわした。洋楽につれて、顫えを帯びたソプラノの独唱が聞え出した。ふた声みこえそれをきくと正一が、
「ギャーか!」
と気むずかしそうに云った。
「ほか出して見い」
直二は兄に云われるとおり手当りばったり針をまわした。いきなり賑やかな三味線がとびこんで来て、八木節に似た唄が入った。それには誰も何とも云わない。直二は父親をまたぎ越すようにして蒲団の元の場所へ行き、そこへ又ころがった。