Classici giapponesi con furigana
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さるとびさすけ
猿飛佐助
織田 作之助
Leggi 猿飛佐助 (さるとびさすけ) di 織田 作之助 (おださくのすけ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 30.413 caratteri · 60 schermate
その翌日、まるで申し合わせたように、鈴鹿峠の麓の茶屋に柔かな物腰をおろした若い娘があった。峠を越すのかと女中がたずねると、
「峠を越せば、遠く信州を猿飛様にやがて近江(会う)路、日の暮れぬうちに越そうと思います」
という気取った言い方は、大方佐助の感化であろう、それは楓であった。
新手村の大晦日の夜と、それから城中での歌合せの夜の二度まで、自分を振り切るように逐電してしまった佐助が一途に恋しくて、思い余ったその挙句に、佐助たずねてのあてなき旅の明け暮れにも、はしたなく佐助ばりの口調が出るとは、思えば佐助も幸福な男である。
「滅相もない、お女中様、そりゃおよしなさいませ。あの峠にはおそろしい山賊がおります。昨日もアバタ面のお武家様が山賊退治に行くといって出掛けられましたが、今に下ってみえない所をみると……」
女中がそう言いかけると、もしと楓はせきこんで、
「もしやそのお侍、信州訛りでは……?」
胸のあたりがどきどきと顫え、そして、
「さア、どこの訛りかは知りませんが、妙に気取った物の言い振りをされるお武家様で……」
という女中の言葉を皆まできかず、あ、佐助様にちがいはないと、起ち上ると、茶代も置かずに山道を駈け登って行った。