Classici giapponesi con furigana
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ことのそらね
琴のそら音
Leggi 琴のそら音 (ことのそらね) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 20.985 caratteri · 42 schermate
折目をつまんで抛り出すと、婆さんの膝の傍に白繻子の裏を天井に向けて帽が転がる。灰色のチェスターフィールドを脱いで、一振り振って投げた時はいつもよりよほど重く感じた。日本服に着換えて、身顫いをしてようやくわれに帰った頃を見計って婆さんはまた「どうなさいました」と尋ねる。今度は先方も少しは落ついている。
「どうするって、別段どうもせんさ。ただ雨に濡れただけの事さ」となるべく弱身を見せまいとする。
「いえあの御顔色はただの御色では御座いません」と伝通院の坊主を信仰するだけあって、うまく人相を見る。
「御前の方がどうかしたんだろう。先ッきは少し歯の根が合わないようだったぜ」
「私は何と旦那様から冷かされても構いません。――しかし旦那様雑談事じゃ御座いませんよ」
「え?」と思わず心臓が縮みあがる。「どうした。留守中何かあったのか。四谷から病人の事でも何か云って来たのか」
「それ御覧遊ばせ、そんなに御嬢様の事を心配していらっしゃる癖に」
「何と云って来た。手紙が来たのか、使が来たのか」
「手紙も使も参りは致しません」
「それじゃ電報か」
「電報なんて参りは致しません」
「それじゃ、どうした――早く聞かせろ」