Classici giapponesi con furigana
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いなかいしのこ
田舎医師の子
相馬 泰三
Leggi 田舎医師の子 (いなかいしのこ) di 相馬 泰三 (そうまたいぞう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 37.947 caratteri · 76 schermate
「まあ、そこへお掛け!」
こう云って、父は、露出しにしてある手を挙げて卓の側の一つの椅子を指差した。そのようすは年に似合わずいかにも元気に見なされた。老医師はあらかじめ自分でそれと知っていた。そしてわざとこの科をこの場合に用いたのであった。
庸介は心持首を垂れて、重く沈黙していた。それに引替えて父の方は、できるだけそうした気分を打ち破ろうと努めていた。で、次のような事を云い出した。
「道中はどうだったな。信州の山々は今はちょうど青々と茂り合っていて、さぞ気持がいい事だったろう。……新聞でみると浅間山がこの頃だいぶ穏でないように書いてあるが、よっぽどさかんに煙をふき出しているかね。」
「そうですね。私が通った時には、ちょうど煙が見えませんでしたが、汽車へ乗り込んで来たその土地の人の話では、何でもひどい時には上田の町あたりまでも灰が降って来るという事ですね。それがために今年はあの地方の養蚕がまるで駄目だという事です。」
「そうか。」
「桑の葉が灰だらけになってしまうのだそうです。」
「なるほど……。」
庸介は、限りなく空虚な感じがした。まるで自分自身の口で物を云っているのではないようにさえ思われた。