Classici giapponesi con furigana
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いなかいしのこ
田舎医師の子
相馬 泰三
Leggi 田舎医師の子 (いなかいしのこ) di 相馬 泰三 (そうまたいぞう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 37.947 caratteri · 76 schermate
帰郷して五日目の朝、彼は初めて裏門を出て、そこに遠く展けている豊かな耕原を眺めた。
夏の真紅な日光があらゆる物の上に煌々と光っていた。彼の目にそれが痛く感じられるほどであった。遠い左手に当って大きな桃林があった。その林の上では薄緑色の陽炎がはっきりと認められた。右手には美しく光る青田が限りもなく続いていた。他の方面に、そこにはキャベツ畑の鮮明な縞があった。近い南瓜畑では熊蜂のうなる音がぶんぶん聞えていた。高く葦を組んでそれに絡み附かせた豌豆の数列には、蝶々の形をした淡紅色の愛らしい花が一ぱいに咲いていた。農夫とその女房達やが、そこここに俯向いて何か仕事をしていた。とは云え、これ等は何も決して物珍らしい景色というのでもなかった。ことにこれは、彼にとってはこれまでに飽きるほども眺めかえされて、……と云うよりはむしろ、あまりに親しいがままにかつてはことさらに眺めるという事さえなかったほどのものであった。それだのに彼は今ここに立って、云うばかりない清新の感にうたれて子供のように歓ばしくなって来た。それがために、自分の現在のさま/″\の事も何もかも一遍にどこかへ消えて行ったかとさえ彼には思われたほどであった。